前回、林が執筆担当したメルマガ、
「押してダメなら引いてみる」では、
現在の採用戦線におけるトレンドについて解説し、
採用したいという気持ちを抑え、
求職者の就活に寄り添い、
応援するという姿勢を貫くことで、
結果的に自園への就職の意思を決定する人を増やす、
という内容のもので、
たくさんの反響もいただきました。
本文はコチラよりご確認いただけます↓
https://www.gclip.net/diary/
さて、
今回はその続編をお送りしたいと思います。
現在の日本は成熟社会という位置にいます。
成熟社会というのは基本的に、
経済や社会制度が発展し、
必要な物やサービスは満たされ、
自由で便利な生活はできるが
物質的成長がピークに達し、
精神的成長(生活の質の向上)を
求める社会と言われます。
そんな成熟社会での企業経営のポイントは
次の2点に集約されると考えられます。
1.「ベター」よりも「違い」
2.「情報処理力」よりも「情報編集力」
1は一ツ橋大学教授の楠木建さんが提唱していて、
2は教育改革実践家の藤原和博さんが提唱している論です。
まず、「ベター」よりも「違い」について。
成熟社会は先に紹介した通り、
必要なモノやサービスが満たされていますから、
分かり易く価格による「ベター(差別化)」で
優位性を保とうとします。
理由は、価格を引き下げることがもっとも簡単で
分かり易いからということになりますが、
この競争は資本力の高い組織が
最終的に勝ち残ります。
採用市場においては、
“給与”や”休日”など、
数字で表せる箇所で「ベター」を取りに行きます。
これも、資本力の高い組織に軍配が上がります。
私立幼稚園では、定員が決まっていますから、
無尽蔵に収入を上げるということはできません。
つまり、新卒で採用した職員に拠出できる金額は
おのずと相場が決まってくるのです。
採用は超売り手市場ですので、
新卒で採用できる年齢層を20歳と仮定し、
さらに幼稚園教諭免許を取得者に限ると
採用マーケットは2.1万人にまで絞られます。
採用となると、
幼稚園約0.9万園(私立、公立)と
保育所約4.0万園
(認可、幼保連携型認こ園、地域型給付型、企業主導型)
がこのマーケットで採用活動を行いますので、
仮に1園ひとりずつ募集をしても、
2.3倍超の求人倍率となります。
勿論、採用活動をしない園もあれば、
複数採用する園もありますから、
先週林が指摘した求人倍率3倍
(一人3園から声をかけられる)というのは
「なるほど…」という数字になるわけです。
このような状況で学生は、
「ウチに来てください!」というスタンスの
アプローチをたくさん受けていますし、
「休日は!」「給与は!」「休憩時間は!」
という”ベターな売り”も、
正直、うんざりするほど見聞きしているわけです。
「就職後に後悔しないように、
自分が納得できる園に出会えるようにたくさんの
園見学行ったほうがいいですよ」
という言葉がけは明確な「違い」として
学生の脳裏に焼き付きます。
次に、「情報処理力」よりも「情報編集力」について。
藤原さんは、
情報処理力は“正解がある時代”に高めると有効な能力で、
情報編集力は”正解がない時代”に有効な能力といいます。
情報処理力は「ジグソーパズル型能力」で
情報編集力は「レゴブロック型能力」ともいわれます。
目の前にある相手の状況や
社会背景という情報に対し、
想像力、思考力、判断力を駆使して
「納得解」を導き出すことで
”相手に気持ちよく次の行動に移ってもらう”チカラ
と捉えると分かり易いと思います。
「納得解」を導き出すというのがポイントで、
先に述べた通り、給与や休日、
待遇面での優位性という「ベター」な情報群は、
自園への一歩を踏み出してほしい情報であることが
想像できますので、
「納得」して次の一歩を踏み出すことは
なかなか難しいのが現状です。
しかし、
「就職後に後悔しないように、
自分が納得できる園に出会えるようにたくさんの
園見学行ったほうがいいですよ」という一言は、
学生にとって有益な状況の提案ですので、
「納得」して次の一歩を踏み出しやすいのです。
かつ、複数園を見たうえで、
”自分の意志”で就職先を決定するというプロセスは
意思決定力(判断力)を養う上でも、
仕事上出会うであろう壁を乗り越える力を養う上でも
重要な要素となりますので、
就職後の定着率を上げていくことにもつながるはずです。
正解のない時代、
不確実な時代のマーケティングでは、
知恵と工夫を凝らしながら
「納得解」を導き出しながら、
ひとつひとつ他との「違い」を出していくことで
道を切り開いていくことが本当に重要です。
就職フェアの開催や
採用情報満載のサイトが増えれば増えるほど
学生にとって採用情報は
「押し」の姿勢に見えるようになります。
こんな時は、採用情報ではなく、
就職以外のお役立ち情報の発信に
徹してみるのもいいかもしれません。
採用市場で「マイノリティ」側に立つことも、
押しではなく、引きの状態になりますので、
是非、知恵と工夫を凝らし
新たなマーケティングを仕掛けてみましょう。