<本文のポイント>
・私立幼稚園の新制度移行率が高まっている
・人員配置の見直しについて議論が行われている
・上記二つによって今後もしばらく採用難が続く可能性がある
・一時預かり幼稚園型Ⅱは約80%の自治体で実施予定なし
・ 今後の取り組みとして伴走型相談支援という子育て支援の形が話題 となっている
2022年もあとわずかとなりました。
12月8日に2022年最後の子ども子育て会議が開催されていま すので、
その内容について簡単に共有をしていきたいと思います。
・私立幼稚園の新制度移行率は約64%に到達
私立幼稚園の新制度移行率は約64%に到達し、
施設型給付の仕組みで運営する園が多くなっています。
特に令和5年度に向けて新制度に移行する園は、
令和4年度に比べ大きく増加(2.9%増から5.6%増) しており、
来年度から新制度で運営を開始するという園が多くなっています。
多くの園が「処遇改善について」「収入について」「 人員配置について」
メリットがあるということで移行する園が多いようです。
実際に移行してからそのメリットを感じている園も多いと予想され ますが、
今後さらに厳しくなっていくと考えられることが人員配置です。
新制度移行についてはまだ移行を希望する園も出ていることから
今後も増加していくことが予想されますが、
私学助成園から施設型給付の幼稚園に移行した場合であっても、
平均して人員配置が2名増加するというデータもあります。
また、後述しますが、人員配置については
今後もさらに人員配置を手厚くしていくという
方向性の議論がされていますので、
まだしばらく採用難が続くと想定されます。
・さらなる人員配置の増加に向けた議論
バスの事故や保育所での虐待などが話題となり、
人員配置の改善を求める声が多く上がっています。
最新の子ども子育て会議の中でも、
海外の人員配置と日本の人員配置は大きく異なり、
日本は人員配置が不十分であるという資料などから、
早急に見直していくべきだと委員の方々から声が上がっています。
国としても4歳児、5歳児の人員配置を変更していく
という流れがあるということは前々から言われていますが、
財源確保の問題から実現されていません。
来年度からこども家庭庁がスタートしますが、
人員配置の見直しはこども家庭庁スタート後の
一つのテーマになるのではないかと予想されます。
人員配置が見直しが行われた場合、
採用に影響を与えるということになります。
少子化によって園児数が減少すること、
また新たな施設がほとんど立ち上がらなくなることを踏まえ、
地域によっては採用枠が減少しているということも
少しずつ聞くケースが出てきていますが、
現在の子ども子育て会議の方向性や施設形態の変化を踏まえると、
一施設当たりの人材は増加傾向になると予想されます。
そのため、採用に関しては長期的な視点を持ち、
準備をしておく必要があります。
高校生や中学生へのアプローチ、
学生アルバイトの募集などを進めておくことで、
将来に備えていくということも視野に入れておければと思います。
・一時預かり幼稚園型Ⅱは多くの自治体で実施予定なし
一時預かり幼稚園型Ⅱ(以下幼稚園型Ⅱという)とは、
0歳児から2歳児に対して、一時預かりのシステムを活用し、
幼稚園が受け入れを行うことができる仕組みです。
今、園児募集は縦(年齢幅)と横(世帯幅) に広がりつつあります。
データによっては実に約56%の1歳児、2歳児が
すでに保育園を利用しているというデータもあります。
よく幼稚園でも0歳児から2歳児について、
幼稚園型Ⅱを活用して受け入れ、
低年齢児へのアプローチを強化していきましょう、
というお話をお伺いするケースがあります。
しかし、現実は約80%の自治体で幼稚園型Ⅱについては
実施予定なしと回答をしています。
私も様々な自治体で幼稚園型Ⅱの相談をさせていただきましたが、
優先されるのは認定こども園化や保育所の開設です。
また、ある自治体では、実際に行っていたが、
結局、幼稚園型Ⅱを利用していた園が
すべて認定こども園化してしまったということで
取りやめになったという自治体もありました。
補助が十分ではないということや、
認定こども園や保育所のほうが0歳児から2歳児を受け入れる施設 としての
施設機能が整えられているということが大きな理由だと考えられま す。
自治体とお話をさせていただくと、 0歳児から2歳児を受け入れる場合は、
やはり認定こども園化が現実的な路線であると言えます。
今後、補助単価などが改善される可能性はありますが、
各自治体が行うかどうかは自治体に委ねられていますので、
0歳児から2歳児の受け入れを検討されている園は、
早めに認定こども園化の検討を進めていくことが望ましいのではな いでしょうか。
・伴走型相談支援という子育て支援の形
出産・子育て応援交付金を活用した子育て支援が
早ければ各自治体で令和5年度からスタートします。
この出産・子育て応援交付金の内容は
「市町村が創意工夫を凝らしながら、
妊娠届出時より妊婦や特に0歳から2歳の低年齢期の子育て家庭に 寄り添い、
出産・育児等の見通しを立てるための面談や
継続的な情報発信等を行うことを通じて必要な支援につなぐ
伴走型相談支援の充実を図るとともに、
妊娠届出や出産届出を行った妊婦等に対し、
出産育児関連用品の購入費助成や子育て支援サービスの
利用負担軽減を図る経済的支援(計10万円相当)を
一体として実施する事業を支援する。」
というものです。
例えば東京・渋谷区では、
同じ保健師らが妊娠期から就学期まで相談に乗る
「伴走型」の子育て支援体制がしかれています。
子育てをする上で発生する各種手続きや、
利用できる助成金の情報取得、
自分に合った園選び、ママ友づくりなどを
一人で行うことはとても大変です。
特に助成金や手続きの話などは、
初めてだと不安もあります。
制度もよく変更になるため、
手続きを忘れてしまうといったことも発生します。
そういった状況の中で
伴走しながら寄り添い、相談ができる支援員がいることは
保護者にとってメリットは大きいと言えます。
幼稚園や保育園、認定こども園は
今までの子育て支援の実績を踏まえ、
そういった役割を担っていくことが望ましいと
子ども子育て会議では議論されています。
今後の子育て支援の形として、
教室やひろばの運営だけではなく、
情報提供や相談業務を行っていくことは
検討するべき内容になると思います。
先日、ある園の子育てひろばのイベントで、
幼稚園、保育園、認定こども園の概要や手続きの仕方、
各自治体によって異なる補助金などの情報を
0歳児から1歳児のお子さんを持つ保護者の方に
講座形式で伝えるというイベントに同席しました。
質問も活発にあり、保護者の皆様の幼児教育への興味関心も深まる
という意味でもとても良いイベントだと思いますし、
保護者の皆様の子育てに寄り添った応援イベントであり、
子育て世帯との関係性構築という視点でも
とても良いイベントだと感じます。
時代に合わせて内容を変化させながら、
これからも子育て世帯に寄り添う提案を心がけ、
地域に応援される園を目指すことが重要です。
このほかにも保育所の多機能化( 児童発達支援センターや子ども食堂など)や
公定価格の見直しなど、様々な内容が議論されています。
ぜひ定期的に子ども子育て会議の内容を確認し、
今後の経営に活かしていただければと思います。