DIARY

【地域の実情に合った異次元の少子化対策を自力でつくる】

<本文のポイント>
・園児募集における0-1歳児へのアプローチは最重要課題となる
・「子ども誰でも通園制度(仮)」は3年間の時限付きモデル事業である
・3-5歳の需要増は見込めないが0-2歳の需要増は努力と工夫で見込める
・自主事業として子育てひろばに是非取り組みましょう!
 
 
<本文>
前回お送りしましたメルマガ
「異次元の少子化対策たたき台から見えるこれから」
は、予想以上に反響が大きかったので、
今回は続編をお届けしたいと思います。
 
前回は「職員配置の変化」と「子ども誰でも通園制度(仮)」
の2点についての発表内容と考察をお伝えしました。
今回は特に反響の大きかった
「子ども誰でも通園制度(仮)」について
もう少し深堀して検証してみたいと思います。
 
メルマガを受信されている皆さんは、
今後0-2歳の受け入れに対してどのような方針をお持ちでしょうか?
 
勿論、運営形態の違いで、描く戦略は違ってくると思いますが、
前回のメルマガでは、
「0-1歳児へのアプローチが重要である」
と、ひとつ「問題提起」をいたしました通り、
これは、幼、保、認こ園等の運営形態の違いに関わらず
平等に重要であることは間違いありません。
 
さて、まずこの子ども誰でも通園制度(仮)ですが、
今後3年間は”モデル事業”として運用・検証されます。
このモデル事業、
基礎自治体となる区市町村が受託し、
認可事業者へ委託する仕組みとなっていますが、
1400超の基礎自治体のうち20~30自治体が
モデルとしてこの事業に取り組み、
3年間の運用及び検証を経て本事業化するという流れです。
 
参考までに、
「異次元の少子化対策たたき台」の元となっている
「子ども家庭庁 令和5年度当初予算案(参考資料)」の
当該ページを添付します。
 
ここで、このモデル事業の本事業化の可能性を検証したいと思います。
以下はGCLIPが昨年調査した関東エリアのある3つの地域における
0歳-5歳の人口と幼、保、認こ園の定員数を表したグラフです。
 
 
 
 
3つのエリアで共通しているのは、3歳-5歳の人口に対して
幼、保、認こ園の定員数の方が上回っており、過剰供給になっています。
多くの自治体が策定するの子ども子育て支援事業計画書において、
1・2号認定の確保量(供給)が見込量(需要)を上回っていること
裏付けるにふさわしいデータとなっています。
 
一方0歳-2歳に目を向けると、
・2歳児は人口の60-75%が既に3号及び若干名1号認定(満3歳児)で入園している
・1歳児は人口の約50-70%が3号認定で入園している
・0歳児は人口の約30%が3号認定で入園している
ことが分かります。
 
ここから見て取れることは、
①0-1歳で自園を認知してもらわなければ園児獲得の機会が著しく目減りする
②2歳児(満3歳児)入園では、保育所と比して幼稚園入園が著しく低い
ということです。
 
これは、前回のメルマガで林が指摘した、
0-1歳へのアプローチの重要性を裏付けるものとなります。
 
加えて、これは今後他自治体の実数を追跡調査していきますが、
育休取得率の上昇と保育士の採用難がハードルとなるため、
多くのエリアにおいて0歳就園率は30%程度に留まると考えられます。
 
さらに「こども誰でも通園制度(仮)“モデル事業”」を、
「孤立した育児」や「虐待リスク」低減の視点で検討してみましょう。
 
先ずは「虐待リスク」から見てみます。
以下は、厚生労働省が発表した「令和2年度福祉行政報告例の概況」を
公益財団法人SBI子ども希望財団がまとめたデータです。
 
出典:「SBI子ども希望財団」
 
虐待件数の6割は3歳-小学生で発生していることが分かります。
勿論、3歳未満の約20%を軽んじることは出来ませんが、
虐待防止の観点でみると、件数の多い方から取り組むのが妥当のような気もします…
 
ところが、「虐待」と「育児の孤立化」は密接に関係しているため、
早期に取り組む必要があるということには一定の説得力があります
 
 
ここで一度立ち止まって考えたいのが、
「育児の孤立化解消」及び「虐待防止」は、
週に1-2回保育施設に子どもを預けることで、
解決する問題なのか?ということです。
 
 
こども誰でも通園制度(仮)による解決の有無はさておき、
違った角度からの社会課題の解決策は必要です。
幼稚園、幼稚園由来の認定こども園では、
長いこと就園前の母子に対して未就園児教室や園庭開放などの、
子育て支援活動の経験があります。
 
これを0-1歳母子向けに「子育てひろば」の提供という形で
新たに展開し地域の子育て母親に寄り添うという形もとれます。
地域子ども・子育て支援の13事業のひとつですが、
補助金に頼らない形で展開することも可能です。
 
内容としては、
①子育て親子の交流の場の提供と交流の促進     
②子育て等に関する相談・援助の実施                
③地域の子育て関連情報の提供              
④子育て及び子育て支援に関する講習等の実施 
の4つの機能が求められていますが、
補助金に頼らなければ、すべてを網羅する必要もありませんので、
「地域の子育て支援ニーズに応える+園児募集につながる」
という視点で独自で組み立てることが可能です。
 
 
 
この子育て支援のニーズは高く2019年の幼児教育保育の無償化以降、
多くの幼稚園で既にこの取組をしていますが、
高頻度で子育てひろばを開放することで
多くの0-1歳名簿が集まるため、満3歳児の入園者が増加します。
 
子育てひろばの企画や集客に関して
GCLIPの無料ツールダウンロードサイト「TOOLBOX」を
活用していただけば、集客までの道のりをショートカットできますので
是非ご活用ください!
 
子育てひろばのTOOLはコチラから
 
さて、子ども家庭庁の政策も0-2歳児の保育認定児受入施設にとって
有益な内容が何かと多いですが、
歴史上、自力で子どもを集め、地域の教育ニーズを担ってきた
幼稚園においてはその企画力と教育力をもって
この現状を打破していただきたいと思いますので、
是非、自力で子育て支援事業を活用して新たな道を切り拓いていただければ幸いです!