DIARY

【「堀田湯」から学ぶ 地域を巻き込んだ園経営】

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「堀田湯」から学ぶ
地域を巻き込んだ園経営
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園の周辺地域に住む保護者がメインターゲットとなる
就学前教育保育施設にとって、
足元地域に住む園児の獲得や、周辺地域の認知度向上は
安定した園経営を実現するために重要な要素です。

今回は、“地域に応援される園づくり”を実現する上で、
地域を上手に巻き込んだ経営のヒントとなる事例として
東京都足立区西新井にある銭湯「堀田湯」をご紹介します。

堀田湯は、2020年のコンセプト・施設のリニューアルを機に
利用者を6倍に急増させた人気の老舗銭湯です。
東京都内に留まらず、評判を聞きつけた利用者が各地から集い、
平日は350人ほど、土日は600人ほどの利用者で賑わっています。
都内の公衆浴場の平均利用者数は1日あたり154名である中、
堀田湯の利用者数は、その2~3倍です。

家庭風呂の普及率が60%を超えたのは1963年頃で、
それまでは銭湯での入浴が一般的でしたが、
今は自宅での入浴が当たり前の時代であり、
銭湯は「サードプレイス」としての機能を持ちます。
銭湯には、全身の清潔を保つ、銭湯本来の機能を果たすだけでなく、
生活が豊かになるという「付加価値」の提供が必要になっています。

堀田湯は、創業80年を迎えるタイミングでリニューアルをし、
地元の常連客も安心して通い続けられる昔ながらの“味わい”を残しつつも
現代的なデザインを取り入れた施設として生まれ変わりました。
施設面だけでなくコンセプトもリニューアルをし、
老若男女問わず人々をつなぎ「この街を、温める」場所となることを
コンセプトとして打ち出しています。

「街を、温める」という言葉の通り、
このコンセプトに共感した地元企業と肩を組み、
コラボキャンペーンを積極的に実施しています。

例えば、夏休みには森永乳業「森永マミー」とコラボするキャンペーンを実施していした。
子どもの銭湯デビューを応援することを打ち出して、子どもは無料で利用でき、
子どもが入浴しやすいように昼間は通常よりぬるめの36℃に温度設定して、
マミーのキャラクターの壁面装飾などを実施していました。


(森永乳業株式会社PR記事より)

他にも、企業のシャンプーやトリートメントを置いて
利用者が商品を試用できるようにしたり、
地域企業とコラボしたステッカーやグルメクーポンを配布したり、
他企業を巻き込むキャンペーンを随時仕掛けています。

また、地域企業の企業名を鏡に施す「鏡広告」を取り入れています。
利用者がシャワー使用時に目に入る、鏡の下に広告枠を設けて

1年間などの期間を設けて掲載しています。
(堀田湯Instagramより)

堀田湯はシャワーが36台設置されているため、
平日であれば、シャワー1台につき1日10人程度が利用します。
シャワーの使用時間は約9分間であるため、
1日の利用者が350名の場合
1つの広告が最大90分間見られるという計算ができます。
鏡広告に表示された企業名が、毎日それだけの時間見られることは
企業名を覚えて印象付けることに繋がります。

私も、この堀田湯を何度も利用したことがありますが、
スマホのような情報を一切持ち込まない銭湯だからこそ
触れる情報が限られるため、鏡広告は印象的です。
銭湯のレトロな雰囲気に馴染んだ鏡広告デザインが、
企業に対する親近感を抱きやすいように思いました。

また、銭湯は入場料が一律のため、
利用者から受け取れる料金には限界があります。
銭湯の入浴料金は「公衆浴場法」で定められており、
都道府県ごとに上限が設けられています。
(現在、東京都の入浴料金は大人550円 )

より多くの売り上げを得るには利用客を増やす必要があり、
その他の収入源は、入浴以外のサービス
(タオルやシャンプーの貸し出し、サウナの利用など)、
また自治体からの助成金が挙げられます。

堀田湯は、新たな収入源を創出するために
上述した企業とのコラボキャンペーンや
鏡広告の実施を通して、収益増に繋げているのです。

この視点は、就学前教育保育施設においても
ヒントになる視点ではないでしょうか。

新制度園であれば、公定価格が定められているため
私学助成園と比較して料金設定の自由度が低いことや、
定員設定により園児数の上限が決まっているため、
新たな収入源を確保する点において、堀田湯の取り組みは参考になります。

例えば、堀田湯の鏡広告のように
利用者(保護者)に地域企業を知ってもらう手段として、
企業に寄付を募って、企業名を園内に掲示する方法があります。
より身近な方法であれば、園だより等の保護者に発信する広報物に
地域企業名を施して広告費を募る方法もあります。
毎月発行する園だよりに年間で掲載する場合、園児200名であれば
広告は合計2,400回保護者の目に触れるチャンスが生まれます。
例えば1枠 10,000円の掲載費とすれば、
保護者による閲覧単価は、1度につき4.2円となります。
子どもの遊び場となるスポットや子育て世帯向けの商品を扱う企業であれば、
その掲載効果に期待が持てるのではないかと思います。

他にも、園の子育て支援の場で企業がコラボする方法もあります。
地域の企業を巻き込んだイベントを企画することで、
園と地域企業双方の認知度を向上させることに繋がります。

園と接点を持った保護者と、地域企業をマッチングさせることで
街を盛り上げることに繋がり、地域から応援される園になるきっかけになります。
園経営に、地域企業を巻き込んだ視点を加えてみてください。