【 独自性のある教育をより分かり易く! 】Posted by Shidara
先日、都内にある私立幼稚園が運営する小学生向けの学童塾で
画期的でとても面白い体験学習の取り組みがありました。
「100円で300円分の買い物をする」というテーマで、
子どもたちがお金について体験的に学習する、という内容のワークショップです。
ざっと説明しますと、
お金の成り立ちや役割をとても分かり易く解説してくれる
経済の専門家の先生をゲスト講師に招き、
欲しいものを得て、みんながハッピーになるお金との付き合い方を
小学校低学年向けにアレンジして以下の流れの3部構成で
実際に体験するというものです。
1)
仮想通貨の100円を使って知り合いのお店で好きなお菓子を買います。
今度は100円を得た相手が、
その100円を使ってお菓子を売った相手のお店で、
自分の求める商品を手に入れます。
これを3回繰り返すことで、
1枚の100円玉で600円分の買い物ができるという体験をしま
ここで、
2)
さらに講師の先生は手持ちのお金が無い場合の場面設定をし、
子どもたちにどうするか?問いかけました。
子どもらしい回答が次々と出てきましたが、
最終的に大人の手伝いをして対価を得る!という回答を引き出し、
子どもたちは周りにいる先生に、
「どんなお手伝いがあったら嬉しいか?」
をヒアリングして、1枚100円の”お手伝い券”をつくって販売し、
自分の持っている労働価値をお金に換える体験をします。
ここでは、
3)
最後にそれぞれの子どもたちがかつて大切に使っていた、
けれど、今は使わなくなったオモチャなどのユーズド品を持ち寄り、
物々交換のフリーマーケットを開催し、
お金を使わずにほしいものを手に入れる体験をします。
ここでは、自分が持ってきたものが交換の対象とならず、
少し寂しい思いをした子どももいました。
真夏でしたので
「キッズスライダーヒップ=簡易的なソリ」が
交換に至りませんでした。
その子は先生となぜ交換できなかったのか、
をじっくり話し合い、納得していました。
講師の先生は総括で、売れない体験もまた、
このプロセスもとても重要な体験だったと子どもたちに話していました。
人が集うマーケット(市場)では、
どういうものが売れて、
どういうものが売れ残るのかを知ることで、
”市場原理”に触れ、喜びや悔しさといった感情が生まれます。
1)~3)それぞれ狙いは次の通りです。
1)経済がグローバル化する中で地域経済が活性化する体験
2)自分の(労働)価値と需要をはかり価値を換金する体験
3)
この体験学習を通して、
将来的に地域社会と連携して学園独自のトークンエコノミー(独自経済圏)をつくり
地域経済の活性化をしていくことが狙いです。
幼稚園に通う子どもたちが将来大人になったとき、
そのまま残る従来の社会システムがどの程度あるのかは実に不明瞭です。
教育機関や企業の在り方も、
コロナ禍においてリモートを主にずいぶん変化してきました。
数年前には元気だった業界も次第に元気を失い、
新たなビジネスが立ち上がっています。
接触型のサービスも非接触型または限定的な接触型に
カタチを変えて息を吹き返したりしています。
冒頭で紹介した事例は、
これからの社会を想定したときにおそらく必要になるであろう
子どもたちが身に着けておきたい「意識」と「行動」を
体験することで社会を活性化していこう、
という園の教育的な狙いがあります。
さて、
今の時代は特に、 ”幼児教育”と”保育”というものが
各施設において入り混じっていいるため、
幼稚園が募集対象とする家族や親にとって、
入園の意思決定軸が曖昧になっているように思います。
平成27年の子ども子育て支援新制度施行以降、
認定こども園や幼児教育・保育の無償化によって、
幼稚園でも2号、3号認定児の受け入れが活性化し、
保育園でも1号認定児の受け入れが活性化しました。
駅周辺立地では0-2歳の3号認定児を受け入れる
小規模保育施設の設置が活発化しました。
平成28年になると
さらに内閣府が企業主導型保育事業の整備を開始し、
保育事業への参入障壁が一段と下がったことで、
令和3年4月までの5年の間で
4035施設もの企業主導型保育施設が、
破竹の勢いで整備されました。
出生する子どもの数は
周知のとおり減少の一途をたどる一方で、
子どもを1号、2号、3号と支給認定別に分類し、
教育・保育提供施設という位置づけにしたことで保護者にとって
子どもを預かり、保育と教育を提供する施設は増加しています。
成熟社会の特徴と言ってしまえばそれまでですが、
私たちが意思決定する時の選択肢が増えることで、
自分にとって
本当に必要な物事を見極め、
選択するための判断基準が曖昧になってしまう状況
が今の社会にはあります。
さて、人間は情報と選択肢が多くなり、
判断基準が曖昧になると、
どうしても分かり易さを選択の軸に置くようになります。
政府は令和3年から令和7年までの
新子育て安心プランによって、
25歳~44歳までの女性の就業率を
82%まで押し上げる計画を立てていますが、
この世代の女性の就業率を上げるとなると、
当然ながら乳幼児の日中保育は目下の課題となります。
この課題に対する分かり易い解決案は主に、
①保育の量が多いこと(たくさんの子どもを受入れられる)
②保育時間が長いこと(子どもを長時間預けられる)
の2点に集約されます。
これに加えて、
立地、知名度、教育・保育コンテンツなどが
付加価値として加味されていましたが、
先に触れた通り、保育が必要な人を受け入れる施設は
この5年で爆発的に増加していますので、
立地、知名度、教育・
(タピオカドリンクが大流行した2~3年前のタピオカ選びと
似たような状況にあると考えると分かり易いかもしれません。)
さて、
このような状況下で今改めて幼稚園が考えるべきは、
冒頭に紹介した事例のように、
これからの社会と子どもたちの将来を見据えて、
「子どもたちは自園の教育に振れることで”どんな力”
ということを分かり易く、
誰もがアクセスできる媒体を通して
発信していくことにあります。
誰にとっても分かり易くある必要はありません。
経営者である先生方が
こんな考えに共感してくれる相手を想像し、
その仮想の相手にとって分かり易い情報
になっていれば、
独自性の伴う、より尖った情報発信になります。
勿論、新たな価値を創りだす必要もありません。
今やっていることの視点を少し先の未来に向けて、
「なぜやっているのか?」
「子どもたちのどんな能力を育むのか?」
「そのために私たち(教職員)はなにをするのか?」
の3点が整理された上で、
働くお母さんにも「安心して任せられる!」と思える
機能が備わっていれば差別化としては十分な役割を果たします。
募集が佳境を迎えるこのタイミングで
是非整理してみてください!