DIARY

【 園児募集の傾向と対策 】

<本文のポイント>
・企業組織の25周年周期でみる幼稚園のこれから
・ライフサイクルから見る幼稚園の戦略
・2006年以降業界で加速化した保育機能の充実化
・「教育価値」の磨き込みとその情報発信の強化
 
 
<本文>
一般的に企業の平均寿命は25年程度(※23.8年)と言われています。
 ※2021年 東京商工リサーチ調べ
 
これは、世の中のトレンド(潮流)が25年周期で
大きく変わるために起こるある種の自然淘汰と考えられます。


幼稚園業界でも同じようなことは起こっており、
ライフサイクル理論をもって検証すると分かり易いです。
 
ライフサイクルとは一般的に、
導入期(事業開始)→成長期(需要増)→成熟期(飽和、頭打ち)→斜陽期(需要減)
そして、→安定期(需要維持)という過程を指します。
 
いまの日本のように社会全体が成熟していると、
ほとんどの製品やサービスは成熟期から斜陽期に位置します。
そのため、サービスを人々が求めるものに進化させた上で
需要の維持または回復にチャレンジしなければ
サービスや企業は社会から求められなくなってしまいます。
 
幼稚園もライフサイクルは他業界同様に斜陽期に位置しています。
斜陽期とは需要が減少する時期ですので、
募集も採用もこれまでと比べ集まりにくくなっていきます。
 
そこで、先ほどの企業の25年平均寿命と照らし合わせて
幼稚園業界の成熟期以降の流れを検証してみました。
 
出典:GCLIP(230126 学校法人経営セミナーより)
 
1980年代に幼稚園の就園率はピーク域に達し、
90年代前半まで微増しその後減少に転じます。
2004年に個人情報保護法が制定されると、
それまで役所で取得可能だった未就園児名簿が入手できなくなります。
これは、長きにわたり自力で園児募集をしてきた
幼稚園にとって大きな痛手となりました。
本格的なインターネットの活用はこれ以降に始まるようになります
 
1980年ー2004年は初めの転換が必要だった「25年周期」であり、
アナログからデジタルへの進化が強いられた時代でした。
 
さらに時代は流れます。
子ども子育て支援新制度の前身となる
「就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律」
が成立し、認定こども園制度が開始したのが2006年です。
 
これ以降幼稚園には、
預かり保育の充実や給食の提供など保育機能が充実していきました
2015年、第3次安倍政権の「アベノミクス新3本の矢」によって
この保育機能充実に拍車がかかります。
一方幼保業界では、子ども子育て支援新制度が始まり、
幼稚園の認定こども園化(保育機能のさらなる付加)※が始まりました。
 
※認定こども園化は「施設型給付園」への移行や
 保育所の認定こども園化、認可外幼児施設の認定こども園化も含みます
 
 
翌2016年には、企業主導型保育事業が開始されたことで、
”保育所”が一気に増加することになります。
通常保育所の設置は各基礎自治体が利用状況や待機児童の実態を踏まえ
公募という形で事業所の整備をしていくため開園までに時間がかかるため
待機児童の早期解消にならないという課題がありました。
しかしこの制度では、
待機児童の有無よりも整備事業者の数とスピードが重視され、
資格や申請のハードルも簡易化された認可外保育施設という建付けでありながら、
整備費や運営費は認可施設並みに支給されるという制度が人気を博
民間企業が雇用の安定という御旗を掲げ、
自社サービスに保育機能を付加すべく大量参入しました。
 
 
このように、少子化に加え新制度園(保育機能を要する園)の増加で、
”幼保教諭”の求人倍率は常時3倍近くまで跳ね上がることで、
過剰な採用合戦が繰り広げられる程の売り手市場となりました。
保育機能を付加した事業所は、
処遇改善手当や家賃補助など上積みできる原資が
行政のメニューによって用意されていますが、
私学助成園ではこれらを自助努力で賄わなければなりませんので、
長期で考えると財政面では厳しくなっていきます。
 
 
さらに2019年には3歳以降の幼児教育・保育の無償化が始まり
遂に幼稚園、保育園は対象者全員に門戸が開かれ、
事実上「誰もがどこへでも通える”超民主化時代”」へと突入しました。
2歳児(満3歳児)へ募集の門戸を広げ、
子育て広場の充実で0-1歳の母子の子育てに寄り添いながら、
募集活動へ繋げていた園の努力は実を結んでいました。
ところが、2023年1月東京都は、
「3歳未満の第2子は保育所の利用料金を無償化にする」と、
発表しました。
 
 
そして、令和5年度より新設される子ども家庭庁の予算案をみて
また驚愕の情報に触れることになります。
 
出典:令和5年度当初予算案のポイント(こども家庭庁)
 
 
このスライドでは、保育所の多機能化について説明しています。
要約すると、少子化で保育所の定員に空きが出ているので、
保育所に通っていない”未就園児”(想定0-2歳の1号認定予備軍)を
定期的に保育所で預かり集団保育の中で育てよう
という趣旨のものです。
 
これまで、頑張ってきた幼稚園の自助努力は
今回もまた”国の政策によって”ことごとく水泡に帰す状態に
なっているように感じてしまいます…
 
 
しかし、ご安心ください!
はじめに提示したスライドの安定期はもう目の前まで来ている!
と、GCLIPでは考えています。
 
保育機能(量)を有する園がマジョリティとなれば、
次に求められるのは教育機能(質)です。
これまで通り、地域が求める教育の質を担保し、
皆さんが掲げる教育と家庭への寄り添いを
しっかりカタチにして実践し、
その実践内容を伝達していけば必ず求められます。
但し、教育内容の伝え方は付けなければいけません。
「なぜこの教育を大事にしているのか?」
といった、教育の狙いと背景を丁寧に言語化して、
伝達していく事に力を入れるようにしてください。
科学的根拠があればベターです。
 
 
「ママがいい!」ー母子分離に拍車をかける保育政策のゆくえー 松井和著
詳説は割愛するので本書を是非読んでいただきたいのですが、
著者の松井さんは、現状の子育て支援政策に対して警笛を鳴らしています。
松井さんは科学的根拠に基づいて実に分かり易く指摘されているため、
幼稚園が教育的アプローチで子育て支援をするためのヒントがたくさん書かれています。
※もちろん、園児募集のヒント!として書いているわけではないので、
 読み手がその視点をもって読み進める必要があります。
 

「ピンチはチャンス」と古の時代から言われています。

時代教育は大事だと古今東西言われていますので、
是非、皆さんの”一番商品”である教育を磨いて地域に届けてください!