DIARY

【ふじようちえんのひみつ】

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ふじようちえんのひみつ
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<本文の内容>
・地域一番園が地域に提案するのは圧倒的な「安心」
・ふじようちえんが地域に圧倒的に支持されるひみつ
・理念とつながる幼稚園のすべてが安心と信頼につながる
 
<本文>
先日、GCLIPが主催する地域一番園勉強会で
立川市にある「ふじようちえん」にお邪魔してきました。
 
多くの方にとって既知の情報だと思いますが、
ふじようちえんは2007年の建替により、
園舎そのものを“巨大な遊具”とし「遊び」を核にした教育の展開で
“世界でもっとも楽しい幼稚園”と評されています。
理事長・園長の加藤積一先生は、
園児がちょっとした不便に出会い、自ら工夫することで得られる利益を
“不便益”と定義し、園内のいたるところにちょっとした不便を施すことで、
子どもたちが物事の道理を学ぶことを大切にしている幼稚園です。
 
今回は地域一番園としての「ふじようちえんのひみつ」を
改めて学ぶべくクリニック型の勉強会を開催したわけですが、
実に多くの学びを得ることができましたので
その一部を本メルマガで共有したいと思います。
 
 
ふじようちえんを運営する学校法人みんなのひろばの
受け入れモデルは以下の通りです。
 
・ふじようちえん(私学助成園)満3歳~5歳 680名
・スマイルエッグス(東京都認証保育所)0歳~2歳 70名
・Fuji赤とんぼ保育園(企業主導型保育所)0歳~5歳 85名
・なすび保育園(認可保育所)0歳~5歳 120名
・Fujiれもん保育園(企業主導型保育所) 0歳~5歳 91名
 
幼稚園と保育園の2業態上記5施設が3km圏内に点在し、
1000名を超える人数の0歳~5歳の子供たちを受け入れています。
主要募集圏は3kmで0歳~2歳のシェア19%(トップグループシェア)、
3~5歳のシェアはなんと43.1%にも上ります。
 
本メルマガで何度か説明していますが、
念のためシェアについての解説表を再掲しておきます。
 
image.png
 
数値上でも圧倒的な一番園であることがわかります。
 
 
さて、今回は何故ふじようちえんが、
これほどまでに高い支持を地域から得ているのか?
この秘密に迫りたいと思います。
 
実際の加藤先生のお話をもとにGCLIPがまとめたものを
解説する形でお届けしますので、お付き合いください。
 
それではスタートします!
 
 
1.理念や方針(政策:ポリシー)と子供の姿が一致する
ふじようちえんの理念は「幸せな未来をつくる」です。
その実現のために「Kids first:子供にとって何が最善かを常に考える」
「Help me do it myself:一人でできるように手伝って」という
方針(ポリシー)があります。
 
「幸せな未来をつくる」を実現するために、
今目の前にいる子どもたちの最善を考え、将来幸せを自ら選択できるように
自立できるように手伝うという方針で支えているのがわかります。
 
教育と経営の基本ビジョンには
「今日の安心」「未来への安心」「育ち・成長への安心」
という3つの安心が掲げられています。
 
「今日の安心」は、
「大切な命をお預かりし、しっかりとご家庭に
 お戻しすることが、99.999%役割」
とあります。
毎日子どもの命を預ける親としては最も安心・信頼して
子どもを送り出すことができると思います。
 
「未来への安心」は、
「あるべき我が子の未来の姿につながる“今”を育むこと」とあります。
これは、理念とポリシーを支える重要な役割を果たすと思います。
あるべき我が子の未来の姿(=幸せな未来をつくる)のために、
今何が必要なのか?を園側がプロとして考え、
子供たちに今必要な環境や活動や言葉がけをすることで、
幸せな未来をつくるための生きるチカラを育むということです。
どんな未来になるかはわからないけど、
どんな未来になっても幸せに生きていけるチカラを育むという姿勢
親にとっては大きな安心につながるはずです。
 
「育ち・成長への安心」は、
「乳幼児期の成長がご家庭からの信頼を生み、小中高大への育ちの見通しができ、
 この園なら、子どもを産んで、育てて、仕事をして、暮らしていっても大丈夫だと
 感じてもらい、我が家の未来の姿、我が子の育ちの見通し想像できる安心感」
とあります。
 
これは、今のように極端に出生数が減少している時代には、
地域に対して多大なる貢献をするビジョンだと思います。
ふじようちえんがあることで、子どものいる暮らしに安心を感じ、
将来の子供の育ちに見通しが立つという役割を果たせれば、
間違いなく地域の”公共財”としての幼稚園になるはずです。
 
その証拠に、園の正門前交差点にそれまでなかった
「藤幼稚園前 Fuji kindergarten」という交差点標識が
”地域住民の要望”で設置されることとなったと言います。
 
IMG_2191.jpeg
 
GCLIPではこれからの地域一番園の条件として
「地域の子育て課題解決」を掲げていましたが、
ふじようちえんの3つの「安心」はふじようちえんの周りに
子育て家庭が増えている大きな要因であると思うのです。
 
学習指導要領の核となる主体的・対話的で、深い学びを重視しつつも、
「揉まれて育つ」ことの重要性を教育現場にふんだんに取り入れるのも
ふじようちえん流の教育観に基づくものです。
例えば、ふじようちえんにはLong beachという名の砂場があります。
その砂場にはおもちゃの宝石が埋められていて、
子どもたちが競って宝石探しをする姿が目に浮かびます。
たくさん採れる子もいれば、全く採れない子もいるそうです。
たくさん採れた子は採れなかった子に分けてあげることも大切にしていて、
その際は、最もいらない(であろう)ものを譲るそうです。
加藤先生は実社会はそうなっているから、
それを学ぶというそれでいい、と言います。

これが、「揉まれて育つ」ことが大切な理由です。

 
 
2.モチベーションを上げる天才的ネーミング
 
ふじようちえんでは毎日300人近い子供が「預かり保育」を利用しています。
就労などで預かりが必要だから使っている家庭が多いと思いますが
この預かり保育、名前が「ルンルンActivity」と命名されていて、
日々の主活動(Activity)が用意されていてカレンダーがポスター掲示されているため、
預かりがマストで必要じゃない家庭もつい活用したくなるネーミンです。
「預かり・・・」とすると、マイナスのイメージを浮かべる人もいるので、
なんか前向きになる名前がないか考えて命名したと加藤先生は言います。
以前(とは言え、10年以上前ですが、、、)
何かのアンケートで預かり保育を使うことで子どもに対して申し訳ないと
感じる人が80%を超えているデータを見たことがありますが、
預かりが就労等の目的で「こどもに対して我慢を強いている」ために
そのような感情を抱いてしまう親が多いのだと思います。
これを「子供が行きたい!」ものに変えてしまえば、
親が抱くこのマイナスの感情はいとも簡単に解消することができます。
加藤先生はネーミングと内容の工夫で状況を180度変えたのです
 
また、Grape SEEDという英語のプログラムを導入していて、
毎日6~9名外国人の先生が在籍し、子供たちの英語教育に力を入れています。
2010年より導入した希望登録制の英語クラスはなんと、
「話せるようになってしまう英語コース」と名付けています。
英語力もしっかり身につき、現在では大学生になった卒園児も通う人気コースです。
英語はとても取り扱いの難しい特別カリキュラムです。
というのも、「経験」に重きを置くなら価格で決めやすいけど、
教育的にはある程度のクオリティも担保したい。。。
ただ、クオリティの担保=英語力の習得とはなりにくく、
導入に二の足を踏んでしまうという話はよく聞きます。
 
「話せるようになる英会話教室」だと
ちょっと信ぴょう性に疑義がかかりそうですが、
「話せるようになってしまう・・・」ならば、
そういう環境があってきっと話せるようになるんだろうな!
と、期待が持てるところにまたネーミングが光ります。
ネーミングはとても大切な差別化要素になります。
 
かっこいい・スタイリッシュ < 分かりやすい・親しみやすい!
 
こういう視点で検討するのがいいと思います。
 
もとより、加藤先生は四六時中Kids firstで物事を考え、
子どものためにこんなのがあったら、あんなのがあったらいいな、
思考を常に巡らせていらっしゃる方です。
 
それが学校法人名の「みんな(地球)のひろば」にも表現されています。
 
アートディレクターの佐藤可士和さん
建築家の手塚貴晴・由比さんらと共に巨大な遊具として建て、
世界的に有名な楕円形のふじようちえん園舎も
発想のベースは全て加藤先生のKids firstにあることがわかります。
 
「ふじようちえんのひみつ」 小学館 2016年 加藤積一著
の147-148ページにはこうあります。
 
引用
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二〇年ほど前、私は子どもたちを「地球のたまご」と位置づけ、
こんなメッセージを伝えていました。
「みんなは、同じ地球に生まれた”地球のたまご”。だから、生まれた場所は違っても、
 みんな友達なんだ。そう、みんなはその殻を破って、地球人になれるんだ。
 みんなで日本人という殻を破って、地球人になってみないか。
 みんなの笑顔があふれる地球のために」
この思いはふじようちえんの”話せる英語”プログラムにつながります。
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園舎も「なかま外れのない円形」で造られています。
全てが「幸せな未来のために」という理念と
Kids first, Help me do it myselfというポリシーにつながり、
一つ一つの環境、活動、名称すべてに
背景と理由があって成り立っているのがふじようちえんひみつなのだと
改めて実感することができた大変実り多い勉強会でした。
 
 
地域で圧倒的な支持(シェア)を得る背景には、
地域から社会へと波及する子育てと子供の未来への安心感があります。
 
 
そんな視点をもって再度ふじようちえんのひみつ(中古/Kindle)を
読んでみてください。
これからの園経営に必要な視点でいっぱいですので。